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『崩れる』作・演出 – 広田淳一

 

東京都出身、1978年生まれ。

2001年、東京大学在学中に「ひょっとこ乱舞(現アマヤドリ)」を旗揚げ、主宰する。
以降、全作品で脚本・演出を担当し、しばしば出演。

 

 

Interview

  ───『崩れる』は再演作品ですので、まずは初演版からの変化について伺っていこうと思います

 

広田 フレッシュなメンバーですからね。ほとんどが初演とは被っていない。〔西川〕康太郎君みたいに初演にはなかった濃い色を加えてくれる人もいますし。とはいえ、初演で大きな役をやっていた沼田〔星麻〕君がいて、それに倉田〔大輔〕君が、今回、稽古場で、かなり主導的に俳優間での演技の試行錯誤を進めていってくれているので──彼のインタヴューでも言っていましたが──、結構初演のときの雰囲気は残るだろうと思います。

  ───以前の広田さんインタヴューで、初演のときは上手く動きを作れなくて苦労した、とおっしゃっていたのですが、その反省を踏まえると、再演版『崩れる』は、より動きのあるものになっていくのでしょうか

 

広田 或る程度そうしたいなとは思っていますね。それと関連して言うと、実は初演のときの、装置の選択がまずかったんじゃないかという反省があって。小さい座椅子、スツールを使ってやっていたんですけれど、今回の再演では、下を畳にしようと思っています。

  ───畳?

 

広田 加えて座布団。もちろん各々の決まって座る位置(座布団)というのは固定されるものの、スツールに比べたら、拘束力は全然弱いので、芝居中俳優さんもあいまいな位置が取りやすくなっています。離れるでもなく、そばに寄るでもなく、みたいな。それほど強い動機がなくても動きが生み出せる。逆に、やっぱりスツールみたいなものがあると、座っている/立っているのオン・オフが明確すぎて、椅子に縛られる感覚が強くなってしまうんですよ。だからその反省を踏まえ、今回は畳という装置の前提で稽古を進めています。

  ───面白いですね。ちょっとしたことですが、初演からのものすごく大きな変化かもしれない。それを決めたのはだいぶ前からですか?

 

広田 そうですね。美術さんとの最初の打ち合わせで、すでにそういう話になっていたと思います。「畳っていうことにこだわろう」と。だから、そうやって初演の反省を活かし、今回は正しく再演として作っています。……あと、うちの劇団も、『崩れる』のような台本のシステムに慣れてきましたし。あの変な二重括弧とか、初演のときは本当に初めてで、現場での戸惑いも大きかったですが、今回は初演の経験を活かせますからね。

  ───そう言えば、これは訊いたことなかったんですが、そもそも会話分析の応用で、ああいう台本を書こうと思った初発の動機は何だったのですか

 

広田 うーん。未だに自分のなかにある葛藤として、自分の書く台詞がしばしば「書き言葉」になってしまうという不満があるんです。これじゃ書かれた文章を読んでいるみたいだ、普通はこんな言い回ししないだろう……と。だから、ちゃんと喋っている言葉でやりたいという気持ちは、ずっと自分のなかにあった。あと、この『崩れる』を書いたときは(2017年)、なんだか、新しいことに挑戦しなければならない!という衝動がすごく強かったんですよね。作品を出す側として、お客さんにまたいつものアマヤドリの感じね、と思われるようになっているんじゃないか、それでは駄目なんじゃないか、という気持ちが強くあって、いつもと全然ちがうじゃん、というものをやらなければ!と思っていた。とはいえ、初演から四年経って、いろいろ一周回って、もう山っ気みたいなものはなくなっていますけれども。

  ───戯曲のリライトは今回どの程度あるのでしょう

 

広田 微調整にとどまります。そんなに大きく変えることはない。ただ、それこそ、前作『生きてる風』での経験を活かして、戯曲の言葉を減らしていく作業をすることになるかな、と思う。『生きてる風』をやったおかげで、こんなに間が長くてもお客さんって観てくれるんだ、ということに自信を持てたので。僕は、僕自身の性格のせいもあって、喋っていないと間が持たないんじゃないか、テンポを早めないとお客さん退屈するんじゃないか……っていう感覚で昔から劇を作ってきてしまっていたんですが、『生きてる風』を経て、言葉が要らないっていう時間帯って結構あるんだなと気づくことができたんですよね。『生きてる風』は、本当に、普段の台本の半分ほどの文字数しかなかったですから。

  ───なるほど。初演の反省を活かしつつ、前作『生きてる風』から継続するものもありつつ、良いタイミングでの『崩れる』再演ということになりそうです

 

広田 それと、今回知立市でやるのも楽しみですね。アマヤドリをまったく知らない人が観に来てくださると思うので。

  ───どういう縁なんですか?

 

広田 縁というか、突然声を掛けてくださったんです。たぶん、劇場さんとして芸術に対するモチベーションが高くて、いろいろとアンテナを張っていて、向こうがこっちを見つけてくれて、「来ませんか」とオファーを出してくださったということだと思います。お客さんも、わざわざアマヤドリを観に集まるというより、劇場に付いているお客さんが多いんじゃないかなと思う。そういう意味では新鮮な上演になりそうで、期待しています。



アマヤドリ 20周年記念公演 第一弾

『崩れる』

 作・演出 広田淳一

2021年 11月4日(木)~8日(月)
@シアター風姿花伝(東京公演)
2021年 11月13日(土)

@パティオ池鯉鮒・知立市文化会館│花しょうぶホール(愛知公演)

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