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『崩れる』出演者 – 倉田大輔

 

栃木県出身、1980年生まれ。

付かず離れずの関係を続けてきたが、2016年に正式所属。
演劇のほか、映画など映像分野でも活動

 

 

Interview

  ───劇団員の倉田さんは、沼田さんと並んで初演に引き続いての再度の出演になりますが、再演に際して何か思うところはありますでしょうか

 

倉田 『崩れる』について言うと、自分はどんな作品でもあまり再演をやりたいという欲を持たない方なんですけれど、『崩れる』という作品は、実はもう一回やりたいなっていう気持ちがずっとありつづけていたんですね。メンバーはほぼ一新だから、今回どういう感じになるのかは未知数ですけれど、『崩れる』をやること自体は楽しみにしていました。

  ───『崩れる』は、ちょっと広田さんの戯曲のなかでも異色ですね

 

倉田 一般的な台本とはやはりちがって、無駄な、一見意味のない言葉が重なっていく連続のなかでそれぞれの言いたいことが浮かび上がってくる、というような台本なので、細かく細かくやっていくしかない作品ですね。そこで登場人物が持っている想いがどうか、ということを超えて、それぞれ役者が技術的に明確に伝えていく必要があると思います。

  ───「技術的」、というのは面白い表現ですね。もう少し掘り下げていただけますか

 

倉田 何って言ったらいいのかな……或る種パッションみたいなものを省いて演技をしなくちゃいけない台本だなと思っていて、それを「技術的」と言ったんですけれども。初演のときは台本外で稽古場で作り上げていった側面も多くあって、その経験を踏まえて言うと、『崩れる』には台本には書かれている以外の動機や要素というのが、たくさんあると言えばあるんですよ。それを、細かく細かく逐一自分たちで処理していかないと進んでいかない部分がある。

  ───その、台本外の動機を細かく細かく処理していくということが、「パッションを省く」ことになるんですか

 

倉田 まあパッションを省くというと語弊があるかもしれないですが……。例えば『崩れる』よりも前の広田さんの戯曲、僕も出演した『銀髪』などでは、テーマ性も大きく取って、現実とは少しちがった世界観でくり広げられる作品で、また、パフォーマンスでも身体が前面に出てくるところがあり、やりとりを成立させる手段のなかにパッションという要素も一つ大きなものとしてあったんですが、『崩れる』では、緻密に会話を作り上げていく上で、その要素は封じないと成立しないところがある、と感じています。これは、初演時に星麻とも話したことなんですけれども。

  ───パッション……劇的な対立にもとづく葛藤の激しさ、みたいなものでしょうか

 

倉田 いや、それよりも……説明が難しいんですが、役者が、その役が抱えている葛藤や想いの強さを表現しようというときに、舞台上で発せられる声であったり、立ち姿であったり、もっと比喩的な言い方をすれば「オーラ」みたいなものを立ちのぼらせることで表現する方法があると思うんですが──個々の役者の方がそれをどのような手法として捉えているかはべつとして──、そして『銀髪』というのは、そうした表現方法で説得力を増すことができる作品だったと思いますが、『崩れる』は、そうはいかないということです。戯曲から読み取った感情や想いを舞台で成立させるための、役者の発散の仕方、目に見えないオーラ=パッションみたいなものでお客さんを圧倒する、ということでは成り立たない台本だな、と。「パッションを省く」とはそういう意味合いでした。

  ───なるほど。戯曲読解の話というよりは、もっと身体感覚に近い話でしょうか

 

倉田 そう、戯曲で読んだことをパフォーマンスに落とし込むときのやり方の問題、ですかね。初演のときは、今までのやり方では成立しないということで、本当に稽古場でちくちく、ああだこうだお互い指摘し合いながらやっていました。初演のときも今回の再演も、出演する俳優の年齢に幅があるなかで、単純に「こう見せたいならこうしたらいいんじゃない?」というふうに、全員でちょっとした技術の共有を積み重ねながら、初演のときは進んでいったし、今回も進んでいると感じています。

  ───そうやって今回、初演と同等の会話の緻密さを実現しつつ、再演としてどこまで先に進めるのかという点に、勝手ながら期待したいと思います

 

倉田 先に進むという点では……これ、さっきの話と矛盾するようなんですけれど、一旦はパッション抜きで、丁寧に技術を積み重ねて作品を完成させた上で、実は、そこにやっぱり僕はパッションを混ぜたいと思っているんですよね。再演に際して、僕個人ではそういう目標もひそかに持っています。



アマヤドリ 20周年記念公演 第一弾

『崩れる』

 作・演出 広田淳一

2021年 11月4日(木)~8日(月)
@シアター風姿花伝(東京公演)
2021年 11月13日(土)

@パティオ池鯉鮒・知立市文化会館│花しょうぶホール(愛知公演)

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