「悪と自由」三部作完結記念! 

 

アマヤドリ古参劇団員座談会・前編

 

長く劇団員をやってきた古参三人で色々語ってもらいましたっ!

 

中村早香×笠井里美×松下仁

 

※司会担当は「せいま」こと沼田星麻さんです!

※注釈部分の敬称略

 

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◆◆◆プロデュース公演から劇団化へ

 

───さて今回は、三月下旬からの本公演、東京芸術劇場シアターイーストにて、「悪と自由」の三部作完結編、外国人キャストもありの、しかも劇団員もひさびさに全員そろっての、なかなか重要な節目になるんじゃないかという『悪い冗談』の公演も迫ってきているところですが、それに先立って、アマヤドリの劇団員を長くやっていらっしゃるお三方、中村早香さん、笠井里美さん、松下仁さんの三名にお集まりいただき、ひょっとこ乱舞~アマヤドリの歴史について語ってもらおうという企画です。

 

笠井:司会は、最近入った沼田星麻くんです。新人劇団員が古参の三人の話を聞くという企画ですね!

 

沼田(司会):そうですね(笑) 新人から先輩に、この劇団がどんな歴史をたどってきたのかを訊いていっていけたらなあと。

 

松下:企画のことを聞いてから、感慨にふけっちゃったよ。どんなことを話すのかなあって、想い出してたら。

 

───そうですよね。……じゃあさっそく振り返っていきたいと思います。アマヤドリが「ひょっとこ乱舞」として旗揚げしてから十四年のあいだに、劇団名が変わっただけではなくて、メンバーも変わったり、それ以外のことでも色々変わっていったと思います。みなさんは、その変化を十年あまり経験してきているわけですが、その間、劇団がどのように組織として変化してきたと感じていますか?

 

中村:そもそも最初は劇団じゃなかったけどね。

 

笠井:ああ、そうだよね! 最初はもともと……。

 

松下:プロデュース公演。で、そのなかに、常連として出ているたとえばチョウさん〔※チョウソンハ=成河。ひょっとこ乱舞旗揚げメンバー。2009年に退団〕だとか沙保さん〔※伊東沙保。2004~2007年にひょっとこ乱舞に参加〕がいて、みたいな形だった。

 

───その形態でやっていたのは、どのくらいの期間なんですか?

 

中村:結構長いよね? 里美が入ってからもしばらくプロデュース公演の形だったよね。

 

笠井:プロデュース公演だった。え、でも、『愛にキて』〔※2008年2月〕から劇団化したんだよね。だから……七年ぐらい。

 

松下:そう。プロデュース公演の時期には、毎公演終わるたんびに「次あなたは出さない」「あなたは出す」みたいなこと、打ち上げで広田さんに言われてた。

 

───えええ?

 

中村:打ち上げで必ず面談があったよね(笑)

 

笠井:面談あった! 面談あったけど……まっつん(松下仁)とはあたし同期で、『水』の初演が2006年か、そのときに一緒に入ったんだけど、あたしは『水』をやったあとに、それから先に決まっていた公演についても「今年は全部よろしくお願いします」って広田さんに言われてたから、『でも時々動いてるわ』〔※2006年10月〕のあととかは面談なかった。でも、まっつんは一回一回……。

 

松下:毎回面談あったし、『銀髪』〔※2007年1月〕のあと、僕いったんクビになったんですよ。

 

一同:(笑)

 

松下:『銀髪』が終わったあとに、「やっぱおまえとは無理だ」ってことになって……。

 

笠井:まっつんはねー、結構ね、落ちこぼれだったよね! あたし絶対残んないと思ったもん。あたしと同期で入ったのが四人で、むしろ他の人が残るのかなーと思ってたけど……まっつんは残んないだろうなって。

 

───ひょっとこ乱舞の初期はそんなふうだったんですね。……では、その後2008年にひょっとこ乱舞を劇団化したというのは、大々的に発表したり、ぶち上げたりはしたんですか。明確な区切りとして。

 

笠井:それはとくにないよね。

 

中村:とくにない。もう劇団じゃないとおかしいくらいに一緒にやってたメンバーだったから。なんか“コアメンバー”とか呼んでたよね、ずっと一緒にやってる人たちを。「客演さんと“コアメンバー”」みたいな。

 

笠井:言ってた言ってた! “劇団員”じゃなくてね。……当時広田さんがよく言ってたのはね、「恋人の関係でいたいよね」っていうこと。

 

中村:最初の頃ね。

 

笠井:要するに、役者側も広田さんのことを好きで、作・演出も役者のことを好きだって思ってる相思相愛のときだけ一緒にやればいいじゃん、みたいな。家族になる必要はない、っていう考え方だった。

 

中村:そうだねー。

 

笠井:今は劇団化してどちらかというと家族的なつながりになってきたよね。かと言ってお互いの価値判断はちゃんとしつつの家族だけどね。

 

◆◆◆ひょっとこ乱舞を選んだ理由

 

───では、みなさんがひょっとこ乱舞への参加を決意した経緯はどのようなものだったんでしょうか。早香さんの場合は経緯っていうわけではないのかもしれませんが……。

 

中村:最初からそこにいた(笑) 最初はプロデュース公演だったから、「自分のところに出てくれませんか」「はい、出ます」みたいなほぼ客演のノリで行って、そこから何回か呼んでもらえるようになって、やがて劇団員になったっていう。

 

笠井:『一石二鳥ワイルド』〔※第一回本公演〕の頃から「ひょっとこ乱舞」だったの?

 

中村:それなんだけどさ、その名前、どっか別のお芝居を観に行ったときに折り込みチラシを見て初めて知ったのね。そのチラシに「ひょっとこ乱舞出演:中村早香」って書いてあって、「ひょっとこ乱舞?……って、なにそれ?……ああ、そういう劇団名になったんだ!」ってそこで結構衝撃を受けた。「そんな変な名前?」って。

 

笠井:あはは。

 

中村:いや、慣れないうちに「ひょっとこ乱舞出演:中村早香」って文字を見たら結構びっくりだよこれ! そのとき初めて知るんだから。

 

笠井:それは広田さんが一人で決めたんだね。たぶん。

 

中村:いや、そのとき一緒にやってた制作さんと決めたんだと思う。で、「なんで『ひょっとこ乱舞』って名前にしたんですか?」って訊いたら、「いや、『ひょっとこ乱舞』か『ひょっとこ海峡』どっちにしようか迷ったんだけどさー」って。どっちもどっちだなーって思ったけど。

 

笠井:そんなぐだぐだな始まり方だったんだね。そのときに出てたのが早香さんと、チョウさんと、ジェットさん〔※酒井彩子〕と……。

 

中村:ほかあとサークルの仲間たち何人か。

 

笠井:十九? 十八?

 

中村:十九の春。

 

───そしてそのままひょっとこ乱舞のコアメンバーとして……。

 

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中村:うん。でも第一回公演が終わったあと、たぶんあたしを第二回に呼ぶ予定なかったと思う。あたし一回目がほんとひどくて、役者として。だからもうこいつはいいや、みたいなことをたぶん思われてて……でも二回目やるときに人が足らなかったんだよね、それでまたあたしも呼ばれて。で、その二回目で、なんとか持ちこたえて。直接そう説明されたわけじゃないけどそういう流れだったと思う。『一石二鳥ワイルド』のときはね、ほんとひどかったから(笑) もう思い出したくもない(笑)

 

笠井:でも広田さん手紙書いたんでしょ、出演者の一人一人に。

 

中村:そう! 一人一人に手紙書いてた! 今でもそれ取っといてるあたし。

 

笠井:ええーーー!

 

中村:いやー昔は愛があったなと思って(笑) この劇団ほんとやだ! って思ったときにそれを読み返して、昔は愛があった、って想い出してます。

 

一同:(笑)

 

───里美さんは? 俳優座の研究所を出たあとに……。

 

笠井:俳優座の研究所を出て、フリーで一年やってて、で高校時代の友達から「こういう劇団あるから観てみなよ」って言われて観たのが『無題のム』〔※第十四回春はみちくさ 三本同時上演。2006年3月〕だったの。それで「あ、ここなんかいいかも」って思って。……なんかね、俳優座の芝居が、新劇と呼ばれる翻訳劇をやったり、古典をやったりで、ちょっと芝居の質としては堅い感じだったんだよ。自分に馴染まない言葉づかいで舞台上に立つってことを三年間やってきてたから……その反動だよね。俳優座を出たときも、なにせ生意気だったからさ、自分の感覚を優先して、自分の感覚と同じところでやりたいって思って、あたし野田秀樹さんが好きで……ひょっとこ乱舞には、言葉の調子とか言葉遊びとかが野田さんの演劇に近いものを感じたんだよね。で、「ここあたしいいんじゃない?」って感じのことを思った。あとは、当時は女性が少なかったみたいで、三人くらいかな? しかもそれがみんな普通の女性って感じじゃなくて個性的な感じだったので、「あたし行けんじゃね?」ってなことも思って、入ったの。

 

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中村:女優でキャラかぶってる人いなかったもんね。

 

笠井:そうそう。そんな経緯で、入りました。

 

───なるほど。……まっつんさんは。

 

松下:僕は、北区つかこうへい劇団の研究生をやってたとき、その同期が「チョウソンハさんのいる劇団面白いよ」って言っていたので、ひょっとこ乱舞を観に行ったわけですよ。観に行ったんだけど……正直言うとそのときは、あんまりピンとこなかったんです。でもまあワークショップ・オーディションやってるから受けてみるかなって、受けて、それで採用してもらって。だから、「ここいいかもしれんな」って思いはじめたのは、『水』の本番になってからだった。ほんとそのくらいになってから。

 

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───本番中に。

 

松下:『水』の本番中、最後の方のシーンで、ヒソップが「じゃあ言おう」って滔々とシトラに語ったりするじゃないですか? そのあとの、シトラとヒソップが詩的な科白をお互いに言ったりする、そういうシーンだったり、あ、あとは次の公演『でも時々動いてるわ』のなかの広田さんの科白の語感、とか……当時笠井さんがやってた役が最後情熱的に語ったりするの、とか、それを受けて沙保さんがちょっと悲しい、みたいになったりする孤独感、とか……なんというか、そういうのにすごく感動してしまったんですよね。で、もう「あ、ここだな」って思って。そっからあとは、ひょっとこ乱舞に出たいなーという一途な気持で(笑) そんな経緯でした。

 

◆◆◆ひょっとこ乱舞からアマヤドリへ

 

笠井:早香さんはこの劇団の生き証人だよね。

 

中村:わたしはお婆ちゃんだからね、この劇団の(笑)

 

───唯一の創立メンバーですから。

 

中村:ねー。まさかまだここにいるとは(笑) 当時は思わなかったな。

 

───十四年間、劇団がずっと変化していった歴史を知っているのはもう、広田さんと早香さんしかいないわけですが……その歴史は、早香さんにはどう見えているのでしょうか。

 

中村:うーん。昔はそんな、劇団っぽくなかったから……というか実際劇団じゃなかったから、こういうふうに劇団員同士で喋るなんてこともそんななかったし……。最初は「全員敵だと思え」って言われてた。「仲良くなる必要なんかない」って。広田さんに。

 

笠井:あたしも言われた! 『水』のときに。言われたよね?

 

松下:いや、ちょっと覚えてないです……。

 

笠井:言ってた言ってた。

 

中村:でも今はなんだかんだで、劇団員みんなでちゃんとやるようになったからね。昔はみんな同じ方向を向くとかじゃなくて、それぞれがべつの方向を向いているみたいな劇団だったけど、今は一応、同じものを見ようとしてるもんね。それが一番変わった点じゃないかな。

 

笠井:そうだね。

 

松下:そう……そういう、僕のなかでも、ずーっと、ひょっとこ乱舞の時代はそういうバラバラな印象だった。広田さん×個々人という印象だった。……だけど、名前がアマヤドリに変わって、「アマヤドリという劇団です」ってことを掲げて、新しい後輩たちが入ってきてから、みんなで一緒の方を見るようになったなって感じがあるかな。ひょっとこ乱舞の時代には、横のつながりは薄かったよね。

 

笠井:たしかに。今はなんか、劇団員が力を合わせて巨大な敵に立ち向かう、みたいな? 広田をどう説き伏せるかみたいな。

 

一同:(爆笑)

 

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笠井:そういう感じになってきてるよね。……でもさ、もっと言うと、チョウさんがいるときの感じと、いなくなったですごく変わった気がする。

 

松下:僕もそれは思う。笠井さんがどういう意味で言っているか分からないですけど、チョウさんがいるときは、ものすごく一極集中だったような気がするんですよね。チョウさん、っていうのが真ん中にドーンってあって。だからチョウさんがいなくなってから、徐々に徐々に、みんなでやっていかなきゃっていう空気が生まれたように僕は感じてて。

 

笠井:そうだね。それがアマヤドリ的なものかどうかは分からないけど……広田さんのなかでも世界観の変化というか、なんだろね、一極集中? じゃないイメージで劇団をとらえるようになったんだと思う、チョウさんが退団したタイミングで。……でもそうすると、早香さんの存在っていうのはやっぱり、広田さんにとってはとくに一緒に歩いてきた人、ということになるのかな。

 

中村:それはね、広田さんとは……付かず離れずみたいな距離感を保っているから、まだ一緒にやれてるんだと思う。これがすごく近付いたりしてたら、たぶん今あたしいないと思う。

 

───今も距離を保っているというのは分かります。

 

中村:必ずね。一定の距離は必ず保つ。

 

笠井:だからあたしほんと早香さんは忍耐づよいなって思う。

 

中村:広田さんとは、仲が良いとか悪いとか、あたしのなかではそういう感じじゃなくて……やっぱり演出家と役者っていう距離感は絶対保つから、そこは崩せない。まあ、それは、演出家だったら誰に対してもだけど。

 

───十年以上一緒にやっている人でも。

 

中村:そこを崩してしまったら、ちゃんと演出家として認められなくなったら、その劇団にはいられなくなっちゃうかな。だからその距離感を保ててるときが一番居心地がいい。

 

笠井:一番広田さんと長くやっている人がこういうスタンスでいるから、それが一つの模範になっているところもある。それで、早香さんの存在が広田さんにとっても支えになってきてるんじゃないかなーって、最近は思う。

 

松下:うん。

 

◆◆◆作品のスタイルの確立

 

───古参の劇団員のお三方から見て、ひょっとこ乱舞=アマヤドリの作品のスタイルが固まりはじめたのは、いつ頃ぐらいからなのでしょうか。

 

笠井:それは、中村さんに。

 

中村:それはでも……ほら、ダンスとかコマンド[※ダンスのパーツとなる短いステップのこと]とかをやるようになってから、今に通ずるスタイルが出来上がったと思うから、たぶん『旅がはてしない』の初演〔※2005年7月〕のときぐらい。

 

───2005年。その頃から踊り出した。

 

中村:そう、あれが初めてのダンス。でもその頃はただの振り付けって感じで、とりあえず踊れない人でも踊れるダンスを取り入れようってだけだった。ダンスをしながら喋ろう、みたいなことはやってなくて……いや、でも最初から今の感じに近いものが出来ていた気もする……。

 

───当時はまだ里美さんがいない頃ですが、ダンスは誰が作っていたんでしょうか。

 

中村:あのね、加茂みかんっていう、今はいないわたしの同期が作ってました。

 

笠井:今は結婚して子供もいるという。

 

中村:リア充(笑) その加茂みかんっていう子は音楽がすごくできて、リズム感もすごくあったので、その子が大体中心にやってたんだよね。

 

松下:じゃあそれ以前は、今みたいに群舞がどうのとかはまったくやってなかったの?

 

中村:全然やってない。……ああでも、群舞じゃないけれど、音に合わせて動くみたいなのはやってたかな。そう、場面転換でダンスシーンみたいなものはあった。『一石二鳥ワイルド』でもやってたね。

 

───今も広田さんは普通に暗転して退場する、っていうのを避けますよね。

 

松下:そもそも暗転を嫌ってるっていうのもあるんだろうね。

 

中村:だから、場転のときは踊ってた。や、最初からずっと踊ってた! コンタクトとかもやってたな、その頃。なんか手をつないで一緒にハケるとか。想い出した今。……そう考えると、十四年間あまり変わってないんだね。

 

笠井:やっぱりね、一人の人間が作ることはそんなに変わらないってことですよね!

 

───(笑)そのあと里美さんが入団して、現在里美さんはダンスリーダーのような役を担っていますけれど、それは最初からそうだったわけではないですよね?

 

笠井:えーっと……。

 

松下:それはやっぱり、みんな辞めていったからじゃないかなあ。

 

笠井:うん。あたしが入ったときはまだ加茂さんがリーダーだったし、あたしが初めて出た『水』のときはダンス自体がなくて、その次の『でも時々動いてるわ』では加茂さんがいたから加茂さんと、あと、はるちゃん──外山晴菜さんっていう、今ダンサーさんで振付家もやってる方が振り付けをしたりして……。で、そのあと『愛にキて』の時に、あ、この作品にはチョウさんも加茂さんもいなくて、でもダンスやりたいんだけど誰か作れない? みたいな話を広田さんからふわっと全員に振られて、一人一人淘汰されていったあとに、最終的にあたしがやることになった感じだよね。

 

松下:ああ、そうだった。

 

中村:あのとき里美すごい怪我したよね。

 

笠井:そうだ!

 

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中村:すごい怪我して、踊れなくなって、でもあたしは踊れないけどダンスは作りたいって言ってやってくれたんだよ。腰だっけ、腰を怪我して、あたしは踊れないけど作る! って言ってやってくれて……そしたら、出来たダンスがすごい良かったんだよ。

 

笠井:おおお? 何年越しかに褒められた(笑)

 

中村:あれ、言わなかったっけ?(笑) それで「里美すごいじゃーん」ってことになって、そっからはずっと里美に頼ってる気がする。

 

笠井:そうだったかもね……。たしかにそういう流れであたしがダンスを作ることになって……。でもあたし、そのときのダンス一部分しか踊ってない。

 

中村:踊ってないね。

 

笠井:しかもその怪我の仕方が、駅の階段から落ちるっていう。

 

一同:(笑)

 

笠井:芝居とは全然関係ないところで怪我して。

 

中村:あたし次の日泣きながら稽古場きた里美を覚えてるよ。

 

笠井:泣いてたっけ!?

 

中村:泣いてた(笑)

 

笠井:嘘!

 

中村:ほんとに泣いてた。覚えてるよあたし。

 

笠井:全然覚えてない……。それって、超若いねー。

 

中村:すごい若かったよ(笑) ほんとに。

 

笠井:二十三だもんね。そんなことあったんだねー。二十二でひょっとこ乱舞に入って……あ、『愛にキて』のときは二十四かな。

 

───ということは、笠井さんは今の僕(沼田)の年齢のときには、すでにダンス作ってたんですね。

 

笠井:そう。自分より何個も上の人にタメ口きいて。えらそーな立場で仕切ってましたね(笑)

 

中村:で、あたしが里美を頼りまくるっていう。今と変わんないね(笑)

 

一同:(笑)

 

◆◆◆劇団でやっていくことの長所

 

───単純にひょっとこ乱舞=アマヤドリっていう枠でも、もっと大きい枠でもいいんですが、劇団を組織してやっていくことのメリットを、みなさんどう感じているでしょうか?

 

中村:え、すごい単純だけど……同じ顔ぶれで同じ体験を積み重ねていけるってことじゃないかな。

 

笠井:うんうん。

 

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中村:やっぱり客演だとその場かぎりだから、成長の糧になるものが得られるとはかぎらない。なんだろ、客演のときだと──もちろん客演先にもよるし、振られた役にもよるんだけど──自分の持っている武器をどう使うか、っていうのが主になることが多いし。それに対して、劇団はその武器を育てるための場っていうか。そんな感じがする。

 

笠井:客演はその場その場の勝負になっちゃう部分はあるからね。

 

中村:うん、とくに一回かぎりの客演だとなおさらね。まあ、もちろんそれはそれで良さはあるんだけどね。

 

───ではアマヤドリという劇団で独自に積み重ねきたものというのは、どういったものがありますか?

 

松下:やっぱ、あれですかね。広田さんの演出のテンポや戯曲の科白の量に対応していったり、……あとは、一拍に一歩みたいなウォーキングのトレーニングをしたりっていうのが、アマヤドリっぽい身体を作ってるんじゃないかなあ。と思いますけど。

 

笠井:一拍に一歩で歩いていって、十一歩目でぱっと振り返る。みたいな?

 

松下:みたいな。そういうので得られる重心の落ち着き方・歩き方っていうのがさ、積み重ねてきたものの一つなんじゃないかな。

 

───身体性を劇団で共有することによって、見えてくるものがある?

 

笠井:そうだね。だからそう、『太陽とサヨナラ』〔※2013年10月〕やったときには、それを感じた。すごく。劇団としてやっていくとこういうことができるんだ、っていうのが見れた気がする。なんだったんだろうな、あれは……。

 

───『太陽とサヨナラ』のときは出演者がほとんど劇団員で、客演が少なくて(ま、当時僕客演で出てましたけど)。同じように劇団員だけだった『ぬれぎぬ』はダンスがなかったので、そういう意味では、『太陽とサヨナラ』は身体性をかなり追求できた作品だったんですかね。

 

笠井:会話劇でもなく、ミュージカルでもなく、ストレートプレイなんだけれど歌いながら踊るっていうのもやる……っていうのをずっと広田さんはやりたいと言っていて、その目標に近付くことができたのが『太陽とサヨナラ』だった気がするね。でも、周りの評価とはそれは必ずしも一致しないんだけどさ(笑)

 

松下:一致はしないね(笑)

 

笠井:どっちかっていうと、あの2013年秋の二本立ては、裏でやっていた『うれしい悲鳴(再演版)』の方がお客さんもたくさん入ったし、評価も高かったんだよね……。だからなんかそのときには複雑な気持にもなったけどね!

 

───それはやはり劇団として共有してきた課題があったからこそ、だと思うんですけれど、アマヤドリがこれまでに劇団全体で追求してきたものって、実際どんな要素になるんでしょう。

 

笠井:……やっぱり、「全員で動く」〔※ひょっとこ乱舞=アマヤドリ内部で形成されてきた動きのメソッド〕なんじゃないかな。全員で、同じタイミングで止まって走って、っていう、魚の群れみたいな、ムクドリの群れみたいな動きを舞台上の役者全員でやれればいい、みたいなことが広田さんのなかにあって、それはずっと追求していってるよね。

 

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松下:うん……そういう動きをやりたかったっていうのもあるけど、もっと、物語とダンスの分離をなんとかしたいっていうか……物語だったら物語だけ、ダンスだったらダンスだけ、じゃなくて、その境い目をなくしていきたいっていうのが広田さんにはあって……それで「全員で動く」っていうのが出てきたんじゃないかなあ。まだそれは舞台上ではなかなか実現してないけれども、なんとかその領域を目指したいっていう。で、『太陽とサヨナラ』は初めて、かなりそこに踏み込んだ挑戦をしたというか。

 

笠井:うんうん。喋りながら踊る、踊りながら喋る、みたいな。

 

松下:最近はそういうところまできているんじゃないかな、と。

 

(つづく)