『天国への登り方』広田淳一ロングインタビュー(抄)

『天国への登り方』公演パンフに収録される
広田淳一ロングインタビューの冒頭部分を
立ち読み的に公開いたします!
物語内容が気になっている方、ご一読ください。

(今回四年ぶりの『天国への登り方』の再演にあたって、そもそもの戯曲のモティーフや、新キャストの顔ぶれについて語っていただきました。収録日:三月二日)

 

────本公演『天国への登り方』は、二〇一九年の初演以来四年ぶりの再演となります。そこで、まずは初演時のことや戯曲の着想のことなどから伺っていこうと思います。初演は、アマヤドリの歴代の舞台のなかでもとくに好評を博した舞台だったんですよね。

広田 すごい評判いいなっていうのは思いましたね、想像以上に。死の話、死に方の話というのはなんとなく語りがたい話題になっていて、おいそれとはできないけれど、実はみなさん話したいことだったんだなというのは感じました。この劇を観て、僕に個人的に感想を伝えてくれた人たちも、自分の人生で体験してきた死のことを語ってくださったり。誰か親しい人を見送ったときの話とか。「親父の死を看取ったことを想い出したよ…」とか。

────父親を看取るという物語の作品ではないですけれどね。年齢や性別問わず、色んな方がご自身の人生につなげて観てくださったのでしょうか。

広田 間口の広い作品になりましたね。でも、それは若干の計算もあった。元々自分の父親を看取ったことや、年配の知人が亡くなったことにインスパイアされていて、当初高齢の方が安楽死ないし平穏死で亡くなるというイメージから創作をスタートさせたんだけれど、途中からそれを、若い人の物語に置き換えて、高齢者のこととして語られがちな安楽死の問題を、題材としては若い人の、恋愛の話にしたんです。それで、年配のお客さんには「死に方」の問題として我が事のように観てもらえるように、若い人には若い人たちの、自分に身近な話として観てもらえるように、と或る程度計算して間口を広くしたんですが、結果として思った以上に好意的に受け取ってもらえたなというのはありました。

────なるほど。安楽死を題材にしたフィクションというのはここ数年でも増えましたが、『天国への登り方』は、たしかに毛色が違いますね。そもそも、広田さんが安楽死をモティーフに戯曲を書こうとした、初発の動機は何だったのでしょうか。

広田 さっき言ったように、父親の死──再発がんで、最期は自宅で看取りました──がきっかけの出来事としては大きかったんですが……創作面で言えば、自分は、もう『ロクな死にかた』(2011年)という作品を過去に書いていたし、知人・友人が死んで悲しい、みたいな物語は今まで手を替え品を替え書いてきていて、それでもやっぱり「死」のことについてまた戯曲を書きたい、と考えたときに、「安楽死」という切り口なら新たにやれそうだなと思い至ったんです。『天国への登り方』も個人的な死を扱ってはいるんですが、一方で、安楽死という枠組みを持ってくることで、その個人的な死が一般的な問題として論じる対象にもなったりする。だから、同じ「死」を描く作品であるにしても、『ロクな死にかた』のアプローチとは別物になりそうだと思ったし、実際なったと思います。

────そもそも「死」のモティーフで書きたい意欲があり、その新たな枠組みとして安楽死のテーマに至ったというのは、面白いですね。

広田 別の角度から言えば、病気になった恋人・配偶者と死別するというベタな悲恋の物語も、安楽死という枠組みがあれば、ステレオタイプでないものとして書けるなという勘もありました。単なる病死ではなく、安楽死だと、自分から死に向かっていく話になりますから。そのあたりの創作上のバランスの取り方は、ほとんど勘ですね。

*   *   *

────次に、再演のキャストの方々について伺っていこうと思います。広田さんはかねてより演出家の仕事の中核は配役だとおっしゃっていますし、初演にも出演していたメンバーと、新しいメンバーとが混在する今回の座組で、現場でどのような試行錯誤があったのか? ──最初に率直にお訊きします。初演も今回の再演も観たお客さんは絶対気になっていることだと思いますが、狐のルナール役の……

(つづきは『天国への登り方』公演パンフレットでお楽しみください!)

アマヤドリ 2023年春 本公演

『天国への登り方(再演)』

作・演出 広田淳一

2023年 3月23日(木)~3月26日(日)
@シアタートラム

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