イプセン✖アマヤドリ 劇団員インタビューvol.4 相葉るか

他の作家に浮気することもなく、古典といえばイプセンてな具合で取り組んできたアマヤドリ。
これまで『ヘッダ・ガーブレル』『海の夫人』『野がも』と3作品を上演してきました。
出演していた劇団員に当時の思い出を聞いてみました! 

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ーー出演作についてどういう作品であると考えていましたか? また、自分の役はどういう存在であると認識していましたか? その考えは当時と今とで変わりましたか?

作品の意味とか意義みたいなものは、当時稽古場で話していたと思うのですが、えーともう5年以上前なので(笑)

 

今、印象に残っているのは『野がも』が、チェーホフに影響を与えて『かもめ』を書くきっかけとなった作品でもある、という事ですね。当時、私自身、絶対『野がも』の方が面白いじゃん! って思っていたので、怖くもあり、取り組む事自体はとても楽しみにしてました。

 

次に自分の役がどういう存在だったかについてですね。私はギーナという母親の役だったのですが、現代の女性像というより、イプセンが生きていた頃の女性像っぽいなーと思っていました。ギーナは、男性メンバーが行う道徳観念だとか倫理観等についての議論には参加せず、ただ家庭を守ろうとする主婦なんですよね。

 

知識とか教養はないけど、女性ならではの強さがある存在だと思ってました。きっと現代だったら、バリキャリになれるくらいには賢くて、自立できる人だけど、時代の制約もあって、きっと彼女なりに導き出した安定や幸せのベストが、現状の家庭だったのかなって思っていました。

 

これは当時の私の勝手な想像なのですが、ギーナにとって家庭は乗り物みたいなもので。

 

主婦、母親である事が生きる術であり、仕事。家族への愛情は本物だけど、自分さえ生きていれば、この家庭(乗り物)が破綻してしまっても、次の乗り物を見つければ生きていけると。そのくらいの強さを持った女性だと考えて、取り組んでいました。今になってその認識が変わったかというと、そうでもないですね。今でもやっぱり強い女性だったんじゃないか、って思います。単純に上演以来、私が『野がも』と向き合っていないだけなのかもしれませんが (笑)

ーー広田演出でイプセン作品を上演する良さや面白さがあれば教えてください。

稽古初めに、「とにかく動いて欲しい!」という指示を、広田さんからもらいました。

会話劇なので、身体が止まったままでもシーンを進める事が出来たんですけど、身体を停滞させないで欲しいっていう指示が出ましてね。だから動くきっかけを相手からもらったり、話す言葉以外にも、自分の中で動く目的やきっかけを常に探していました。

 

勿論、全然動けないシーンもあって、ただ震えて泣いてるみたいなシーンの時もあったんですけど(笑)

動く演出の効果、良さとして、演じていてスケールが広がる感覚はありましたかね。最初は、動くことに難しさを感じてもいたんですが、やっているうちにかえって動きに救われていたところは、無自覚な部分も含めて沢山ある気がしています!

ーーアマヤドリのオリジナル戯曲を上演する時と比べて気をつけた点などありましたら教えて下さい。

広田さんが新作を書く時は、当て書きをしてもらう事がみなさん多いと思うんですけど、古典となると、そうはいかないですからね。

 

『野がも』の戯曲を読んだ時に、私にとって全ての役が等身大ではなかったので、年齢や見た目のリアリティーはある程度諦めていくしかないと、はい、もうそれは最初の段階でいったん見切りをつけました(笑) その上で、役が持ってる核の部分だったり、人間関係をしっかり見せていく事によって、お客さんに「こいつがどうゆう奴なのか」ってことを理解してもらおうと、そっちに全精力を傾けた記憶がありますね。表面的な部分ではなくて、人物の核を掴まえようってしていました。

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ーー当時の思い出があれば教えてください。

キャスティングが決定するまでの期間に、本当に長いこと三役分を稽古で取り組んでいたんですよね。なのでとにかく大変でした(笑)

 

アマヤドリのオリジナル新作だとあまりない事なので苦労もしましたが、それぞれの視点で役柄や作品全体を眺められる時間でもあったので、どう演じたら相手が助かるかな? とか、自分が相手にどう演じて欲しいと思っているかな、とか、こうした方がおもろくなるでしょ、など、いつもよりも全体像が見れたのは良かったし、面白くもありました。

 

稽古場では、客演さんと劇団の先輩方がベテラン揃いだったので、皆さんが猛威を奮っているのを見ているだけで楽しかったですねぇ。

あ、猛威ってのは芝居の上手さでって事です!

強いおじさんばっかりでぶつかりあうシーンも多かったので、こえーってなってました(笑)

 

自分の演技についての思い出といえば、特に相手役でよく関わったのが、倉田(大輔)さんと(ワタナベ)ケイスケさん。

 

倉田さんは私がどの役どころを演じても、自然と受け入れてくれる感じがして頼もしかったですね。『野がも』の戯曲って起伏が激しいので、「ええ? 自然な人間の感情として、本当にそうなる?」みたいな、ドカンとした感情の振り幅もあったりしたのですが、倉田さんは綺麗に乗りこなしていらっしゃったので、隣で見ていてがんぷく? 眼福でした!

 

ケイスケさんには、自主稽古の時間を沢山奪わせて頂きました(笑) 本番では絶対にやらないであろうものすごく小さなスケールで演じてみたり、変な動きをしたり、とにかく役についてもよく話し合いました。私が演じたギーナという役は、ケイスケさんのグレーゲルスとはあまり沢山話さなかったのですが、セリフじゃない部分でのコミュニケーションを、本番中もバチバチ飛ばして下さってて楽しかったし、時間をかけて下さった分、多くのことを勉強させて頂きました。

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ーー今回の出演者に向けて応援メッセージなどお願いします。

人形の家は散々やり尽くされた作品なので、私はぶっちゃけこれに挑むって、凄く怖い事だなーと(笑)

でも現代口語版という事で、より一層理解や共感値が深まる作品になるんじゃないかと期待しております。

面白くできる俳優陣が揃っていて、広田さんの両チームの演出がどうなるのかワクワクしますし、客席で観るのを楽しみにしております!! あ、でもきっと私は衣装など、何かしらお手伝いする事になると思うので、その際は皆様を支えられるよう頑張ります!