2024年6月、アマヤドリ本公演『牢獄の森』豊橋にて上演!!

近頃、自分のバカさ加減がエスカレートしていっているような気がする。年年歳歳、僕は知りもしないことを知ったつもりになることが増えてきているし、味わったこともない出来事をあたかも体験したかのように錯覚することが増えてきた。まあ、無理もあるまい。加齢に伴ってバイタリティとやらは減少してきているし、テクノロジーの発展に伴って旅行はもちろん、恋愛や友情すらも「実体験」が億劫になってきてしまった。なにせ実体験は、リスクが高すぎる。そもそも、信じられないような速度で仮想現実の質が向上しているのだから、置き換えられる体験はどんどんノーリスクなものに置き換えていけばいいじゃないか？　それの、なにが悪いんだ？

──そんなことが進んでいったら未来はどうなるんだろう？　本作では、そんな想像力に基づいて、近未来を舞台にした物語を描いてみたい。「AIと人類の対決」なんて構図ではなく、もっと淡々と予想図として未来の精神生活を提示して、これからの人間のあり方をぼんやり思い描いてみたい。

この作品の世界では、建前上は誰もが「自分らしく自由に」生きられる社会が実現しているが、実際は厳しい相互監視に束縛され、かなり狭められた範囲の「正解」の言動／行動しか許されない自己検閲の沼が広がっている。物語の想像力を頼りにして、戦うべき相手を見つけることさえ出来ない時代の「戦い未満の悪戦苦闘」を、なんとか描き出してみたい。