【みちくさ公演】アマヤドリと演劇人の出産と稽古-女優編。(小角まや、榊菜津美、星野李奈、右手愛美、大井南)

2022年『抹消/解除』・2023年『代わりの男のその代わり』と、子育てをしながら劇団の公演を企画した劇団員の小角まやが、アマヤドリが劇団としてどのように女性のライフステージに寄り添っていけるのか? これまでと今度を考える座談会を開催。

アマヤドリ/広田と縁のある過去出演者からお子さんのいる右手愛美さん・大井南さんをゲストにお呼びし、劇団員からは異なるライフステージにいる榊菜津美星野李奈を加えてざっくばらんにお話ししてみました!

 

参加者 小角まや(以下、小角)
    榊菜津美(以下、榊)
    星野李奈(以下、星野)
    右手愛美(以下、右手)
    大井南(以下、南)

ALL よろしくお願いします。

小角  ではでは、はじめましての方もいると思うので、自己紹介も兼ねてご挨拶をお願いします! 私はですね、第一子が二歳になり、今は自宅保育なので家で夫や親の助けを借りて家族で交代で育児をしながら舞台をやっています。今、絶賛稽古中です!

 

 大井南です。私は元々新潟で演劇をやっていたのですが今は山形に移ってそこで働きながら演劇も少しずつやっています。先日、第一子が五歳になりました。

 

右手 右手愛美です。私は二人子供がいるんですけど第一子が四歳で第二子が二歳になります。上が幼稚園、下が保育園に通っています。一年半くらい前に夫の仕事の関係で東京から引っ越して愛知に住んでます。名古屋で時々演劇やっていて、来月の本番に向けて今稽古中です。稽古中は保育園と幼稚園に子供を預けたり。後は夫や両親、たまに親戚なんかにも頼っています。

 

 榊菜津美です。アマヤドリ劇団員です。私は昨年くらいから妊活をしていて、最後に舞台に出たのが今年三月の『天国への登り方』で今は舞台をお休みして映像のお仕事をたまにやっています。よろしくお願いします。

 

星野 星野李奈と申します。新人劇団員です、よろしくお願いします! 自分は結婚はしていなくて、まだ結婚だったり子供の事だったりを考えてはいない状態なのですが、最近少しだけ結婚したいという気持ちが芽生えてはいます。具体的に何歳までとかはまだなくて、自分の活動との両立などがちょうど気になっている時期で、今回参加させていただきました!

 

ーーー妊娠・妊活・出産・育児で演劇を離れていた期間はどれくらいだったのか? 出産した方は出産前に思い描いていた復帰のタイミングや形など実際とのギャップや心境の変化などあればお聞かせ下さい。

 

 私、ちょうど舞台をお休みして半年くらいなのですが、妊活自体は昨年の始めからしてたんで、自分の劇団や自分の企画への出演はまだ調整頂いたり相談出来る可能性があるけど、完全な客演だとよりご迷惑をかけちゃうなとの思いがあって一年半前くらいから客演はストップしてました。

 

 私はいわゆる「授かり婚」だったので、妊娠がわかった時には次の舞台が二本決まっていたんです。なので妊娠四ヶ月と六ヶ月で出演して、そこからお休みして生後八ヶ月ぐらいで短編に出ました。夫も演劇をしていて、その短編の演出もやっていたのでおんぶしながら稽古やってましたね。そして、生後十一ヶ月の時に広田さんの作品(アマヤドリ×サクマ企画『ブタに真珠の首飾り』2019年8月上演)に出ました。なので、出演は出産から期間は空いてなかったんですけど、その後、すぐ二人目が欲しかった事もあって妊活をはじめたのでなかなか客演先への出演は難しくなりました。昨年久しぶりに二十分くらいの一人芝居に出たんですけど妊娠、出産よりも妊活中の方がスケジュールが難しいな、と感じました。

 

小角 すごいですね! 生後八ヶ月で復帰したのは産む前から予定してた事なの?

 

 いえ、それは決めてなくて。産んでからずっと育児ばかりしてて、何かやりたいなという気持ちがすごくあったので、短編なら出来るんじゃないかと思って……。ただ、私の場合は演劇が仕事ではないので、ちょっと東京との感覚の差はあるかもしれません。

 

小角 でも『ブタに真珠の首飾り』出てましたよね! あれ四人芝居でセリフも皆多いし、あの作品を子供が〇歳の時にやるってすごいなっと思う。

 

 環境が良かったと言うか……少し長い話になりそうなので……

 

小角 それでは、その話は後に是非伺いたいので、続いては右手ちゃんお願いします。

 

右手 私、妊娠が分かったのが二月くらいで毎年出てる舞台が八月にあったのですが、その現場が妊娠している自分には合わないと思ったのですぐに断りました。自分の劇団の本番も七月にあったのですが、そちらは何かあった時の為に私の役だけダブルキャストにして妊娠六ヶ月で出演しましたね。お腹も結構出てきてたんだけど、自分の劇団だし、自分の脚本だし衣装とかで隠す感じでやりました。そして産後は八ヶ月でゲスト出演みたいな感じで他の舞台にも出演しましたね。ただそれは一日稽古して一日本番の実質二日位のものでした。その頃CMにも復帰した感じです。その後、二人目を産んだこともあって完全復帰には三年半くらいかかりました。それこそ本番全部出ます的な舞台は南さんと同じでアマヤドリの作品(『水』2021年12月上演)でした。

 

小角 本格的な舞台への出演はどうでしたか? 出産前と産後のギャップはやっぱりあったのかな?

 

右手 私、自分が劇団やってたのもあって、妊娠、出産をした女子も演劇に戻れるような劇団を作ろう! 作れる! みたいにめちゃくちゃ気軽に考えてて、子供いながらも出来るし、みんな産もうよ! くらいの気持ちでいて、上手くいくと思ってたんだけど実際はなかなか難しくて、産んだら全然変わってしまった感はあります。それこそ無条件に出産を周りは全員喜んでくれると思っていたのですけど、実際は劇団員にも色々ストレスをかけちゃって……。そういう雰囲気を感じたから私も怖くなっちゃったんですよね。こういう環境で演劇を作るって事は、何かいけないことなのかな? すごく人に迷惑をかけることなんだなって感じちゃって。だから自主的に動くことが一切出来なくなっちゃった。それもあって子供産んだ後はオファーを頂いて何かをやるって事しかやってない感じです。トークライブ位なら自分一人なので企画してやってるけど、演劇活動ってなると、すごく迷惑をかけるんだなっていう気持ちになっちゃう。でも、やりたい! と思うから、まやちゃんの事本当にすごいな! って思う。

 

小角 いやいや。私も産む前はすごく甘く考えてて、二世帯同居してるから親もすごく手伝ってくれるし、親に預けたり保育園にも入れたりして演劇に戻りたくなったらすぐ戻れるでしょ! くらいの感じで思ってた。でも、産んでみたら、思ってた以上に出来なかった。産後半年以内にもオファーはあったんだけど実際は厳しくて……。でも、南ちゃんと同じ様な感じでずっと育児で家に籠もってばかりいると結構病んじゃって、いつ演劇に戻れるんだろう? また演劇本当にやれるのかな? みたいな恐怖感もすごくあった。

 

 うんうん。

 

小角 そんな中で産後十一ヶ月の時にオファーしてもらって復帰はしたものの、稽古日数を制限して貰ったり他の人とあまり絡みがない役とかで出番にも気を使って貰っての出演という感じでなんとか、という感じでした。ちょっと話が脱線しちゃうかもしれないんですけど、私、子育てに対して結構こだわりが強くて、自分がこう育てたいとかこうやりたい・やって欲しくないみたいなのがなかなか手放せなくて……。例えば今月とかはすごく忙しくて、育児から気持ちも時間も離れる事もあるんですけど、でもそれは一ヶ月の事だから割り切れると言うかそれまでは自分が思うように全力でやれてるからみたいな……。ちょっと根を詰めすぎる感はあります。自分の企画にしても自分のスケジュールにあわせて貰ったりどこか迷惑をかけている自覚はあるんです。だから、その分自分がしっかり働くから……。みたいな感じでやってる部分があります。だから、右手ちゃんの気持ちはすごく分かる。

星野 自分が今、役者としての活動があんまり出来てない状態だなっと感じていてその事について悩んでるのもあって、妊活を含めて結構長い期間演劇をお休みしてる間、役者としての感性の保ち方についてどうしてるのか? みなさんにお聞きしたいです。 

 

 私の場合は子供がまだいるわけではないから、アクティング・コーチのトレーニング受けたり勉強などやりたい事は比較的出来てるんですけど、この先本格的に子供が産まれて何年か休むっていう事になっても、そういう人生経験も含めて豊かに感じるし、その育児体験自体が人として俳優としてのレベルアップに繋がるんじゃないか? 最高の経験なんじゃないだろうか? みたいな漠然としたプラスの感覚があるんですけど、実際のところはどうなんですかね? 

 

右手 プラスはめっちゃある! 子育ては自分育てな部分が大きくて、常に自分と向き合わないといけないから、本当に役者でそういう事考えるのが好きで良かったなと思う。子供が出来て演劇やる事の何が良かったか考えると、元々私は役に入り込み過ぎちゃうところがあったんだけど、育児しながら演劇に参加すると、どうやったって生活を切り替えなきゃいけないし、どうやったって子供のためにも日常をある程度の水準で送らなきゃいけないから、病み過ぎない……じゃないけど、そこの部分は自分には良かった様に思う。あと、純粋に母親役はやりやすくなる(笑)

 

小角 それは絶対にそう。(母親としての)涙腺とかすごく緩くなるの!

 

右手 最近やっと、子供がいるからこそ、自分が楽しく生きないと! って思えるようになって、ずっと側で見てる子供のためにも自分がやりたいように生きなきゃなって強く思ってる。子供のための時間を過ごしつつも、よし! 今日はもう一人で温泉に行っちゃおう、とか一人で何かやろう! みたいな……。出産前までぼんやりと生きていたんだけど、今は時間が限られているから、だからこそ限られた自由をどうやって楽しむかって事に常に頭を働かせてる。そんな事もあって今日は一人で温泉に来ています(笑)

 

小角 そうだったんだ(笑)

 

右手 絶対、子供いなかった時より自由に生きてるなって感じるし、限られた自由で目一杯時間を過ごしているから、一人だった時よりも色々なことを吸収出来てる気がします。 

 

小角 なるほど~。うちはまさに今、子供がイヤイヤ期真っ盛りでついつい怒っちゃうんだけど、その後に自己嫌悪が襲ってきて、今までに体験したことない葛藤を体感しています……。ただ子供と一緒に生きてるというだけで、得難い経験をしているなと思う。妊娠中にしても、胎動や身体の変化、お腹が大きくなっていくことだったり逆子だったのが産む直前に一日で直ったり、というような神秘的な体験とかもして、そういう実体験を積むことが感性を保つことに繋がってる……と、信じたい(笑) 

 

 私は子供産んでからは感性がより拡がった気がしています。子供と一緒にいることで自分一人じゃ考えなかったことや自分一人じゃこんなとこに来なかっただろうなっていうのもそうだし、今子供が五歳になって結構色々なことを喋るようになって、こんな風に感じるんだ、と気付かされる事が沢山あって。自分の視野が拡がったのを感じます。あと自分はこんな事で怒るんだ、って再発見したり。 

 

右手 分かる! 子供を通して自分を知るみたいな。

 

星野 そうなんですね。今日はホント、いろいろと勉強になってます。

 

 私もみなさんの話を聞いていて、ちょっと希望が持てました。子供が出来たら自分の時間を捧げなきゃいけない。自分が自分の時間を使う事に対して決して悪い事じゃないはずなのに罪悪感も感じちゃいそうで、24時間365日子供のためだけに過ごす日々、みたいなイメージがあったので。 

 

右手 確かに最初の一年は私もそんな気持ちあったし、初めての経験だから、小さい命を守るにはそうするしかないと思ってた。当時は両親も近くにいない環境だったから余計にね。だから、みんなにもっと頼っていいし、もっと適当でいいよって言いたい! 今だから! 

 

小角 私はまだママ歴二年だから、頭では分かるんだけど中々うまく行かないことも多くて。でも、そんな事言いながらこの前はじめて外泊してダイビングの免許取ってきたんだけど。 

 

ALL (笑) 

 

小角 そしたら次は、役者をやる上で子育てとの両立について、しんどかった、辛かったことなどあれば聞かせて下さい。 

 

右手 とにかくスケジュールの管理。誰がこの時間子供を見るとか誰が迎えに行くとか常に考えなきゃいけないし、それも子供の体調によって180度変わるので常にその事を考えてなきゃいけないのが辛いかな。

 

小角 私は何より睡眠不足が辛かった。演劇って基本夜公演でしょ。稽古は合わせてもらえても本番は夜でそれはどうしようもないから、うちの子供がとにかく早起きだったというのもあり寝不足が続いてきつかった。 

 

右手 二つの現場やってる感じだよね。 

 

小角 子育ては千秋楽ないもんね。

 

星野 うわー。そうか、本当にそうですよね。

 

 私は月~金は小学校の教員をやっているので、地方の演劇って稽古は平日夜と土日が多いんですが、夜稽古があると子供の面倒どうしようってなります。なかなかお父さんだと寝てくれなかったりもあって(笑) そして、土日でも夫と稽古が被った時、誰が面倒見るんだとかはあります。それでも、演劇してる時間が楽しいから出来るんだなっと思っています。

 

 私の場合は妊活してて、いつ子供が出来るかどうか分からないから現場を控える。でもそれで妊娠しなかったときにちょっと虚無感というか、結果論なんだけど出演できたじゃん……って思うこともあって、一方で自分がプロデューサーでいる時は子供が出来なくても常に出来た時のことを考えながらやらなきゃいけなくて、そういう事が大変だなっと思います。 

 

右手 でも、それこそ広田さんならそこら辺はフレキシブルにやってくれそうじゃないですか? 

 

 そうなんですよ。ちょっとその話していいですか? もし子供出来て安定期入る前に本番被ったらめっちゃ迷惑かけるなっていう思いがあったから、昨年の夏に今年の舞台出ないっていう意志を広田さんには伝えたんですよ。そしたら、広田さんと直接会って話した時に「極論、本番の一週間前に子供が出来ました。体調的にどうしても出れませんってなっても、確かにめちゃめちゃ大変だし迷惑もかかるけど、まぁどうにかなるから……妊活と出演、どっちも取りに行って良いよ」って言って下さって。そう言うのは簡単かもしれないけど、結局公演の責任取るのは広田さんなのに……「子供作ることは個人のワガママって捉えなくていいよ。社会的に大事なことだから。そういう風に思ってくれていいよ」とも伝えて下さって。私としては迷惑かけるのが怖かったので本当にありがとうございますという感じでした。そして、それは私に特別というよりは他の人に対しても同じ様に考えていると言ってくれたのは凄くありがたかったです。 

 

右手 私も子連れでアマヤドリの稽古に参加したからその雰囲気よく分かる。そんなこと言ってくれるのは劇団に所属する価値になるよね。 

 

小角 私は実はまだ子供を稽古場に連れて行ったことがなくて、実際にアマヤドリの稽古場に連れて行った事のあるお二人にどんな感じだったか聞いてみたいです。 

 

 稽古場で普通に授乳とかしてましたし、周りの人達も遊んでくれてたし、泣いても気にしないでいてくれたり、広田さんが全然連れて来ていいよって言ってくれたので、ベビーカー持って行って寝た瞬間に稽古を通したりとかしてました(笑) 後はダブルキャストだったのも大きかったかもしれないです。その辺は臨機応変にやってくれたのは助かりました。ただ子供は泣くので集中するのが大変でした。

 

 自分の子供だと泣いてなくても意識がいっちゃって大変じゃないですか? 

 

 それはもちろんいっちゃいます。でもその事で後悔じゃないけど、もっと出来たんじゃないかと思ったりもして、それを広田さんに相談した時、役者って色んな視点を持ってるというか半分こっちに意識があって、そっちにも意識があるのも役者だからいいんだ。というような事を言ってもらえたので。 

 

右手 私もアマヤドリ出た時は下の子が11ヶ月で上の子は3歳位でもう走り回る・叫ぶみたいな状態だったので、通し稽古をするってなっても、子供は気にせず舞台に出たり入ったりをするので結構大変でした。そんな中でも、広田さんが先頭切って稽古場に子供がいるのは何か良いよねって言ってくれて、そういう空気を作り出してくれたのもあって現場の人達は誰も子供がいることを嫌そうにしなかったし、みんなも舞台上に子供がいても気にせずにやってくれて、逆に子供のおかげで、どんなトラブルが起きても大丈夫っていう座組の結束が強まった様にも感じました(笑) 

 でも、実際稽古場に連れて行きたいかどうか? と言われると連れて行きたくはないんだけど、子育てをしている状況では連れて行かざるを得ないという感じ。みんなに置いていかれたくないから子供連れてでも稽古行きたい気持ちがあるから……ただ、それはアマヤドリの環境を知っていたから出来た事かもしれないです。知らない現場だと稽古休むという選択を取るかもしれないので…… 

 

星野 あの! ちょっと私にとってまだ先の話かもなんですが、子供がいる状況の中で演劇をやるのに理想の環境とか、今後こうなったらいいんじゃないかとかあったら是非聞かせてほしいです! 

 

右手 うーん。どうだろう。私、当時子供一人を抱っこしてもう一人をベビーカーで移動してたんですよ。で、ある時、駅から稽古場まで急な坂があってその移動が怖くって。夫に助けを求めた事もあったんですけど、それが難しい時もあるじゃないですか? そういう時に共演者に助けを求めたらみんなが快く助けてくれて。それがすごくありがたかったですね。今後はだから、たとえば稽古場に子供連れて行く事とかがみんなに共有されていて、駅から稽古場まで通うのに大丈夫かどうかを助け合う的な環境があったら、本当にありがたいと思う。後は理想を言うなら、本番には出ないんだけど子守係的なポジションの人が常にいてくれるとものすごく助かる。そうなると安心感あるなぁと思う。 

 

 私も山形のママさんたちと、どんな環境があれば演劇できるかな? って話をした事があるんですよ。その時話題にでたことで、稽古場の雰囲気はもちろん大事なんですけど、理想を言うなら稽古期間中にベビーシッターさんを雇えると安心して稽古に専念出来るのかな、と。なので、そういう助成金とかあればいいなっと思います。 

 

小角 シッターさんいてくれたら、最高じゃない? そんな発想はなかった。ところで、みんな夜稽古って辛くないですか?  

 

 辛い。 

 

右手 私の場合は保育園に入れるか問題は大きかった気がする。演劇やるには子供を保育園に入れないと無理だと思って、そこで申請したんだけど愛知だからすぐ入れたんですよ。これが東京だったら無理だったかもしれない。最初は名古屋に引っ越して、もう演劇はやれないかなと思ってたから出演の話を頂いた時にやっぱり心が踊ったし、もちろん悩みはあったけど、子供二人を全く平等に育てるのは無理なんだし、それぞれに対して真剣であれば大丈夫なのかなっと思って保育園に入れることに決めました。そのお陰で自分の時間が出来たからこそ気付けた事もあって自分の人生をしっかり楽しもうって感覚にもなれた。 

 

 

ーーーもし、妊活を始めるかどうか悩んでる女優さんに声をかけるとすれば? 

 

 悩んでるならすぐに始めた方がいいと思う。自分も含め多いと思うのだけど、結構簡単に子供が出来ると思って生きてきたけど、実際はみんながみんなそうではないから悩むくらいならすぐに始めた方がいい! 

 

 それは激しく賛成します。私は不妊治療初めて二年なんですけど、こんなに出来ないんだなっと思って……。一人目がすぐに出来た事もあってこんなに薬も飲んでるのに出来ないんだってなって、だから欲しいんだったら早く動いた方がいいと思う。

 

右手 理想と現実は違っていて、ハッピーな事はもちろん大きいけど、同じくらい大変な事もあるので、もちろん産まない人生も全然ありだと思う。それはそれで絶対に楽しい人生だと思うし、子供がいてやっぱり失うものだってある。だから、本当にどっちでもありなんだと思う。責任の重さに逃げ出したくなることもあるから……。 

 

 真剣に考えると予測できないことが多くて怖いじゃないですか? だから、どんな未来になるかは分からないけど、私は今産みたいという本能に任せようと思ってる。 

 

右手 私の場合は下の子供が今二歳だから成人まであと十六年だ。女優には年齢制限ないんだし、私が三六歳だから五二歳になった時に子供産んだ経験のある女優になってればいいのかな、っていうそういうフェーズです。怖いとは思うけど人生を長いスパンで見るとどうにかなるよ(笑) そんだけ真剣に女優やってる人たちは年齢とか関係ないよ。 

 

 長いスパンで見て女優人生のどこかで妊活・妊娠期間を取るって考えたら、検査して色々早めに知っておいたらいいんじゃないかな。でも悩んじゃうよね。 

 

星野 はい……。出産後の体型維持とか肌とか髪の調子はどうでしたか? 

 

右手 授乳期は授乳前と後で胸のサイズが全然変わるから、女優さんはそういう危険性も考えながら衣装を選んだほうがいい(笑) 

 

 私はアレルギーがなくなってニキビとかも消えてキレイになって、アトピー体質が改善されたりしました。ただ抜け毛は凄かったですけど。 

 

 アマヤドリ的には体力とか心配になるんですよ。作品によっては結構踊ったりもするので、どうなのかな? っと思っていて、実際右手さんとか『水』でめっちゃ踊ってましたよね? 

 

右手 ねえ! 確かに産後は骨盤ガタガタしてる感じはあったんだけど(笑)、結構大丈夫でした。子育ては抱っことか子供追いかけたりしていてスポーツみたいなところがあるので体力は全然平気でしたね。あ、聞いて下さい! 私稽古中にやってた10円ゲーム1位だったんです。すごいでしょ!(※10円ゲームとは?  手の甲の上に10円を一枚乗せ、落としあうゲーム。アマヤドリではトレーニングの一貫として取り入れている。)

 

小角 す、すごい。 

 

 今、振り返って産後何ヶ月からなら舞台に立てたなって思いますか? 

 

右手 しっかりした規模の公演だとしても、保育園に預けられるなら0才児からすぐに立てると思う。

 

 それはどっちかっていうと教育方針の兼ね合いですかね? 

 

右手 そういう気がします。 

 

 そうですね、子供をここまでは見ていたいとかの気持ちもあったりするので……。

 

小角 あとやっぱり寝不足との戦い(笑) 

 

右手 だね。寝不足を加味して稽古して貰うしかない気がします。 

 

 

ーーー最後になりますが今回参加してみて感想はいかがですか? 

 

星野 自分の活動のことを考えた時に将来的に、子供を育てるっていうこと自体、すごい不安だったりとか、怖いなっていう気持ちがあったので、あまり考えないようにしてたというか避けていた部分があったんです。でも今回、皆さんのお話を聞いてて心の励みになったというか、感性の保ち方についても子育ての中で自分の事を見つめ直せるような話が聞けて、新しい発見があってすごく明るい気持ちになれました。

 

 私はこれまで子供が出来たら、何が出来るようになって、何が出来なくなるのかみたいな事ばかり考えてたんですけど、今日皆さんのお話を伺って、子育てにしても芸能活動の続け方にしても自分がどうしたいのか? って事が大事だし、皆さんそこの意志の部分をしっかり考えていらっしゃるんだな、と。そこがすごい気付きポイントでした。 

 

右手 社会とか親からのプレッシャーとか絶対あると思うけど、全部やらなきゃって思ったら、本当に苦しいことしかなくなっちゃうから、ある程度自分本位でやっていいんじゃないかな。子供も結局自立が目標だから……。すごく子供が可愛いから子供が全てみたいになりそうなんだけど、いつか自分も子離れしなくちゃいけないと思ってるから、とにかく私は私のことを責任持って考えて、子供はサポートしていくような感じでいますね。 

 

 子供の自立が目標、っていう考え方、すごい! でも本当そうですよね。そう考えるとお母さんが自分のやりたいと思うことをやってる時間とかも、意義深くなりますもんね。 

 

右手 そうそう。だから子供と離れてる時間は子供がかわいそうとかどうしようとか思っちゃうけど、そうやってお母さんが作り上げた舞台とかが残った時にそういう形でのかっこよさを見せられればいいやと思ってる。それで私は今日はただ遊んでくるっていう時も、嘘つかないできちんと言ってる。それは、子供たちにも楽しく生きて欲しいから……。だから、楽しみながら頑張るって事が出来る人になって欲しくて、お母さんも楽しく育児して、仕事して、たまには遊んでやってんだなって、思ってもらえるといいと思っています。 

 

小角 うんうん。 

 

 それはすごく思う。 

 

右手 そうじゃないと、ほんとに子供のせいにしたりとかね、無駄に怒っちゃったりとかもあるので。 

 

 子供のせいにしたくないっていうのはすごく思う。出来ないのも子供のせいにしたくない。だったら、もうやりたいことをやって生きていこう! みたいな気持ちは強いですね。 

 

右手 「お母さんは俺らのせいで我慢してる」って子供は絶対感じちゃうもんね。 

 

ALL うんうんうんうん。 

 

 ホント、子供の勘は鋭いですよね。 

 

右手 だからこそ、どんどん本当の自分になっていく感はある。本当に楽しまなきゃとか本当に嘘じゃなくやりたいって思うことをやるようにしないと、そういう背中を見て子供は育つと思うから。 

 

小角 ちょっとね、面白すぎる。もうね、ほんとにね、ずっと話したいくらい。いや、本当に普通の仕事してるママじゃなくって、演劇やってるママだと、こんなに色んな感覚が通じるんだっていうのがすごく新鮮でもありました。本当に今日はありがとうございました。 

 

ALL ありがとうございました。

右手愛美

右手愛美プロフィール

2001年、雑誌「ピチレモン」でグランプリを受賞し、同紙のモデル4人とパフォーマンスユニット「ピポ☆エンジェルズ」でソニーミュージックからメジャーデビューを果たす。2006年、ソロでのメジャーデビューシングル「Go- Go-Fighteen!」が発売し、歌って踊れるモデルとして代々木体育館など大きなステージに立つ。その他、モルディブイメージガールコンテストでグランプリ受賞など、持ち前のスタイルと天真爛漫さで夢を現実化していく。
20代になり、日テレ系「PON!」のお天気お姉さんに選ばれ、演劇で鍛えた形態模写でお茶の間を沸かす。女優活動をする中で、もともと好きだった作詞作曲を活かし、オリジナルミュージカルを上演する劇団「ピヨピヨレボリューション」を2015年に旗揚げ。脚本も手掛ける。
2016年に月に一度のトークライブ「うてちゃんねる」を企画し、時代錯誤のオフラインにこだわり、赤裸々に芸能界の裏側や自身の恋愛体験を話すことで話題となる。プロデュース業にも興味があり、1人ミュージカルを上演するアーティスト「てらりすと」のプロデュースも手掛ける。
2018年ピヨピヨレボリューション「疫病神」で自伝とも言える作品を創作し出演。同作で佐藤佐吉賞、最優秀主演女優賞を受賞。
その後、恋愛バラエティショー「バチェラー season2」に参加。自身の婚活もエンタメ化する。婚活の末、2018年に結婚、第1子出産。2020年に第2子出産。
2022年から活動拠点を東京から名古屋にし、育児と演劇活動をしている。時々、YouTubeやTikTokやnoteで短編小説やエッセイを配信している。

大井南

大井南プロフィール

2014年、新潟演劇祭プロデュース公演『恋する世阿弥』への出演をきっかけに演劇熱が沸騰。新潟を中心に演劇活動をしてきた。
新潟の劇団、Accendereの発起人。
2019年、アマヤドリ×サクマ企画『ブタに真珠の首飾り』に出演。

アマヤドリ みちくさ公演

『代わりの男のその代わり』

作・演出 広田淳一

2023年9月28日~10月6日@スタジオ空洞

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