イプセン✖️アマヤドリ 劇団員インタビューvol.2 小角まや

他の作家に浮気することもなく、古典といえばイプセンてな具合で取り組んできたアマヤドリ。
これまで『ヘッダ・ガーブレル』『海の夫人』『野がも』と3作品を上演してきました。
出演していた劇団員に当時の思い出を聞いてみました! 

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ーー出演作についてどういう作品であると考えていましたか? また、自分の役はどういう存在であると認識していましたか? その考えは当時と今とで変わりましたか?

私が演じたエルヴステート夫人は、初めはヘッダが内心見下しているような内気で地味な女性として登場するのだけど、最終的には立場が逆転してしまう。

というか、ヘッダが手に入れたかったものを手に入れてしまう。

しかも夫人自体に悪意はなく(あるのかもしれないけど、はっきりと攻撃されたりすることはなく)、敵にするには一番食えない相手。というイメージです。

当時は、夫人にヘッダに対する悪意はなかったんじゃないかと思っていたけど今は少し、悪意だったりに何か腹の底に抱えてるものがあっても面白いのかなと思います。でも全く悪意なしで全てを持っていってしまう人の方が本当に怖いとも思うので、やっぱり純粋でまっさらな尽くす女として演じた方が面白いかもしれないですね。

ーー広田演出でイプセン作品を上演する良さや面白さがあれば教えてください。

アマヤドリの劇団の年齢層からしても、実年齢より少し年が上の、つまり自分より人生経験豊富な役をちょっと背伸びをして演じることになる場合が多いと思うんです。

リアリティという点では劣るかもしれないけど、

背伸びして挑んでいる役者さんをみるのは私、結構好きなんですよね。

見ててすごくワクワクする。

そういうキャスティングも広田さん演出の魅力とも言えると思う。

若くて力強いパワーというか。

 

私が出演した『ヘッダ・ガーブレル』の時は出演者が本当にみんな20代前半とか中盤の人が多くて……

多分みんなの読解力や人としての深みみたいなものを、若さの勢いとセンスで補うために、ストレートにはやらず特殊な演出がついたのかなと思ってる。

全員ロボットのような、ある種制限された動きと台詞回しで演じて……。

でも、それが意外と面白かったんですよ。

 

だからその後『海の夫人』も同じ感じの演出で、エンターテイメントとして純粋に見応えがあった。

ただ、『野がも』を観た時に、いい意味でそういった演出的な工夫が一切なくて、お芝居に真っ向から挑むストレートな演出は観ていて惹き込まれました。

膨大な台詞量の会話劇なんだけど、大胆な動きもたくさん取り入れてて、身体性を感じられるところもアマヤドリならではの魅力だと思いました。

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ーーアマヤドリのオリジナル戯曲を上演する時と比べて気をつけた点などありましたら教えて下さい。

オリジナルでは当て書きされる時もあるので、自分が演じやすいキャラクターを演じる場合も多いんですけど、既存の戯曲で、それまでやったことのないようなキャラクターだったので、居住まいや立ち振る舞いを研究した記憶があります。

ちょっとおとなしいというか、おしとやかで内気な女性の役だったから、そういう人の身体の使い方ってどんな感じだろう? って意識しました。

 

細かい仕草とかももちろん大事だけど、それ以上に根本的なその役の身体感覚みたいなものを掴めると強いと思うのですが、悩んで行き着いた先が、「瞼が重い」っていうイメージでした。

目を見開いたりそんな野蛮な行為はしない、自分の中では常に目がチワワみたいにうるうるしてるような(実際は置いておいて)気持ちで演じました。

当て書きだと絶対に来ない役(笑)

 

台詞も、翻訳劇ということもあり、オリジナル戯曲に比べると言い回しや出てくる単語自体に馴染みがなかったので、

どんな意図で言っているのか理解するために時代背景とか文化も幅広く調べた……ような気がします。

もう10年前だから……記憶が……。

とはいえ、とにかく若くて、勢いメインでお芝居を組み立てていた頃だったので、もしも今やるとしたらもっともっと調べて臨むと思う(笑)

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ーー当時の思い出があれば教えてください。

動きもセリフのリズムも細かく決めて、ある種ダンスの振り付けのような形の演出だったので単純に覚えるのが大変でした。

動きを制限してやった分、身体もビシッと止まっていないとかっこ悪く見えてしまいかねなかったので……

体幹の弱さとか突きつけられてひたすら凹んでましたね。

 

ヘッダ役のなっちゃんは一回も捌けずに出ずっぱりでセリフ量も膨大だったけど、見事にこなしていてすごかった。

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ーー今回の出演者に向けて応援メッセージなどお願いします。

今回初めて戯曲に大胆に脚色を施すということで、イプセン先生の傑作と広田さんの言葉が混ざり合うのがとてもとても楽しみです。

 

演出も2バージョン。

 

チーム名からしてまず面白そうだけど、激論版では役者同士がどんな風に関係して、どうぶつかり合うのか。

疾走版では役者個人の、どんな身体が、どんな動きが見れるんだろう?なんて想像すると……

いや、もうすでに面白くなって来ましたね。大期待です!