劇団公式website

『崩れる』出演者 – 山森信太郎

 

東京都池袋出身、1971年生まれ。

舞台を中心に声優としても活動。
2016年プロデュースユニット髭亀鶴始動。
隙を見つけては観劇に勤しむ。
池袋を世界に誇る演劇の街にと目論む。

 

 

Interview

  ───俳優紹介インタヴューとして、山森さんの演劇歴といったことからお聞きしていこうと思います。山森さんは、三十代半ばから演劇をはじめられたんですよね

 

山森 そうですね、三十五ぐらいから。

  ───それは何をきっかけに、ということはありましたか

 

山森 その頃までには自分は、大学を出て、就職をして、結婚をして、子供が出来て、離婚して(笑)、という人生の段階を済ませていて、親父には叶わなかったのですが、お袋がなくなる前に孫の顔を見せることができたことが大きくて、或る種の達成感を得ていて、目標というか指針が無くなっていたときに、それまでは演劇は観るだけでしたが、「自分でもやってみるか」と思い立って、はじめました。

  ───演劇に触れた最初は観劇からでしょうか?

 

山森 元々映画が大好きで、映画やドラマ経由で知っていた三谷幸喜さんが劇場でミュージカルを初めてやるっていう雑誌記事を読んで──その頃は東京サンシャインボーイズとかも全然知らなかったんですが──、その記事をきっかけに劇場に足を運び、『オケピ!』という作品を観たんですね。それが、自分で選んで演劇を観た最初です。その舞台がめちゃくちゃ面白くて、そこから気になる俳優さんなどを手掛かりにどんどんいろんな芝居を観に行くようになり、やがて小劇場にたどり着いたという感じです。そこでもピンからキリまで、いろいろな舞台を観ましたが、そのうち「これは俺でもできるんじゃないか」って思って。そして、まずは基礎を学ぼうということで、ENBUゼミナールという学校に通いはじめた、というのが自分の俳優活動の端緒になります。

  ───山森さんはご自身でも公演の企画を立てたりしていらっしゃいますが、山森さんにとっての理想のお芝居のイメージというのはありますでしょうか

 

山森 理想は……そのときどきで変わったりしますけど、与えられた役として舞台上でちゃんと呼吸する、その役として生きるということを大事にしたいと思っています。例えば、観劇しているときに舞台上でハプニングがあったとして、どうなるかな、というのはいつも気になりますね。一番分かりやすい例だと地震で、結構大きな揺れがあったときに、舞台上の俳優さんの対応って人それぞれで、完全にそれをなかったことにして芝居をつづける人もいれば、臨機応変にアドリブでそれについて台詞を言ったりする人もいる。どちらが正しいということではないんですが、自分は、その役のまま舞台上に立ちつづけて、何かハプニングがあっても──例えば誰かの台詞が飛んでしまったりしても──その役として対応できることが理想だなと思っています。もちろん、頭のなかで「うわ、どうしよう」という想いがぐるぐるするのを完全に排するなんてことはできないと思いますけれども。

  ───ハプニング時の対応からその役として呼吸できているかを見る……面白い基準ですね

 

山森 ハプニングにかぎらず、自分のその日の体調とか、その日のお客さんの雰囲気とか、想定したものとは大きくちがっていたとしても、やはり役として舞台上で生きていられる、というのが理想です。

 それをもっと別の言い方で言うなら、自分は、役を自分に引き寄せるよりも、自分が役に寄っていく方が好きなんだろうと思います。とはいえ結局、最終的には自分自身から離れられないんですけれどね。今更DNAレベルで自分が変わって変貌するなんてことはないわけですから。

  ───そんな山森さんに、今回の『崩れる』という戯曲はどう見えているでしょうか

 

山森 まず、変わっていない部分もありつつ、年を経るごとに広田さんのやろうとしていることって徐々に変わってきているんだなということを感じています。それこそひょっとこ乱舞時代から、広田さんの舞台といえば群舞もあってこそ、というようなところがありましたが、今では一切踊ったりしない舞台も珍しくないですし、模索しながら進んでいるんだなと思います。その流れのなかに『崩れる』という戯曲もあると思いますが、『崩れる』は、結構初演を演じた役者の、その人そのものがにじみ出ているようなところがあって、ああ、この役は宮崎〔雄真〕さんぽいなあ、とか、この役はまさに梅ちゃん〔梅田洋輔〕だな、といった印象が強くあって、目下それを再演することの手強さということを自分は感じています。

  ───とくに山森さんの演じる予定の役は、独特の難しさがありますね。それを「自分が役に寄っていく」という姿勢で山森さんがどう演じられるのか、上演を楽しみにしています

 

山森 あと一つ、古い話で恐縮ですが、ドラマの『3年B組金八先生』のセカンドシーズンの、生徒の加藤がバイトしている喫茶店の、そのマスターが元不良みたいな感じで、店も不良の溜まり場になっているという設定がありましたが、その喫茶店が『崩れる』の旅館の設定に似ているなと思って。更生させるわけじゃないけれど、家庭事情が複雑な生徒をバイトとして雇って、そういうやつらが集まれる場所を作っている……というところが。こんな連想も何かの手掛かりにできないかなって考えています。


アマヤドリ 20周年記念公演 第一弾

『崩れる』

 作・演出 広田淳一

2021年 11月4日(木)~8日(月)
@シアター風姿花伝(東京公演)
2021年 11月13日(土)

@パティオ池鯉鮒・知立市文化会館│花しょうぶホール(愛知公演)

*公演詳細はこちら