「劇場都市TOKYO演劇祭」への参加について

アマヤドリ、主宰の広田淳一です。「劇場都市TOKYO演劇祭」の参加について、簡単にではございますがご説明させていただきます。

 

アマヤドリは「劇場都市TOKYO演劇祭」の参加団体のひとつです。正直、とても迷いながら今日この時を迎えておりますが、今のところ参加を辞退することは考えておりません。コロナ禍で苦しむ演劇界を盛り上げたい、という意志がこの演劇祭の根本にあると信じて参加を決めたわけですが、現段階でその意志に決定的な疑義が生じたとは考えていないからです。

 

そもそもこの演劇祭の企画は急ごしらえのものであり、「はじめに企画趣旨があってそれに賛同する企画、団体を募って演劇祭を立ち上げた」という順序でことが進んだわけではありません。アマヤドリにおいても演劇祭が企画されるよりずっと以前から劇場の使用予約、企画立案を行っており、そのあとで演劇祭へのお誘いを受けました。

 

アマヤドリが舞台作品を創作するにあたっては徹底した創作者中心、現場中心の姿勢を貫いております。いかなる団体・個人であれ創作者以外の人間が作品の内部に立ち入ることは固くご遠慮いただいております。運営事務局であれ、協賛企業であれ、例外はございません。今回に限らず、いつでも、これからも、ずっと。

 

アマヤドリは演劇祭の立案当初から現在に至るまで作品に関するいかなる注文、要望も受けておりません。万が一、そのようなことがあれば躊躇なく演劇祭への参加を取り止めます。

 

演劇祭概要の文章が議論を呼んでおりますが、その内容については主催者側が経緯を詳らかにしないまま変更を行うなど、端的に申せばグダグダな対応が続いており、その程度の覚悟で出された文章に関して反論するつもりも連帯するつもりも一切ありません。また、主催者側が合意を形成できぬままに出された謝罪文に関しても、演劇祭全体にどのような効果をもたらすのか判然とせず、現時点で適切な運営状況にあるとは考えておりません。明らかにおかしい。ただ、今後是正される可能性はないと断定もできない、と考えております。今後の運営状況が適正化されるよう心から願いつつ、看過できない状態が続くようであれば参加を辞退する、という方針で状況を見守りたいと思います。

 

もちろん、このような状態を作ってしまっていることの責任の一端は私にもあります。演劇祭の総合的な運営についての精査が至らぬままに参加を決め、このような醜態をさらしつつある現状については大変心苦しく、心よりお詫び申し上げます。

 

上記のような演劇祭に対する疑義を抱えつつ、今なおアマヤドリが辞退の決断を留保しているのは、ひとえにシアター風姿花伝さんとの信頼関係によって、です。コロナ禍で多くの舞台公演が中止を余儀なくされ、いつ公演そのものが吹き飛んでもおかしくないという状況が続いております。そんな中、少しでも演劇界に明るい話題を提供したいというお気持ちから今回の企画が立ち上がったものと私は理解しております。そのお気持ちに対しての信頼は一貫して揺らいでおらず、それが演劇祭への参加を辞退せずにいる理由です。すでに複数の団体がひとつの責任の取り方として参加を辞退されました。それも無理からぬことと存じます。わたしたちは、少なくとももうしばらくの間は演劇祭の内部に留まり、問題の本質について考え続けることをもって微力ながら責任をはたしていこうと思います。

 

最後にお願いです。今公演に参加する俳優・スタッフ個人に対して演劇祭にまつわるご質問・ご批判などをなさるのはどうかお控え願えませんでしょうか。気分を害されている方が多くいらっしゃることは承知しております。ですが、個々の俳優・スタッフ個人には全体への決定権はございません。今公演の参加者にも様々な考えを持つ者がおり、それらの意見を踏まえて、団体としてのを判断をくだしているわけです。つまり、この演劇祭への参加/辞退への最終的な責任はすべて私にあります。ご意見、ご質問などございましたら団体へ、もしくは、主宰者である私、広田淳一個人までお問い合わせくださいますようお願いいたします。公演前につき即座に対応できぬこともあるかと思いますが、ご容赦頂けましたら幸いです。いずれにせよ、この件に関してはまた改めてじっくり論じる機会を持ちたいと思います。ともあれ、公演直前ですのでひたすら創作に専念することにいたします。なるべくおもしろい作品を作って、楽しんでいただきたい。というね、はい。今はただ、それだけです。

 

2022/1/30
アマヤドリ主宰 広田淳一