【みちくさ公演】『代わりの男のその代わり』ダブルキャスト対談 vol.1(宮川飛鳥と堤和悠樹)

新作公演『代わりの男のその代わり』
ダブルキャストで同じ役を演じる宮川飛鳥、堤和悠樹

アマヤドリのことやお互いのことを、
ざっくばらんに語ってもらいました。

 

※宮川飛鳥(以下、飛鳥)と堤和悠樹(以下、カズ)

飛鳥 今、俺はアマヤドリに入ってちょうどニ年くらい経ったタイミングで。(カズとは)同期感あるけど実はちょっと入団時期ずれているんだよね。

 

カズ そうね。同期ヅラしてるけどね、俺が(笑)

 

飛鳥 どれくらい経つんだっけ?

 

カズ 劇団員として本格的に参加したのが『抹消』だから、ちょうど一年経ったぐらいかな。

 

飛鳥 どうですか? 一年、経ってみて?

 

カズ あー、ようやく劇団員として馴染めてきたかなって。『抹消』は三人芝居だったから関わる劇団員の方も限られてて。『天国への登り方』はいろんな劇団員の方が参加してくれたからファミリー感というかね、一緒にやっていく人たちなんだなっていうことを肌身で感じられた。

 

飛鳥 アマヤドリも人数多かったりするからね。

 

カズ めちゃくちゃ多い(笑)

 

飛鳥 でも、その感覚わかるよ。俺は一番最初に参加した『生きてる風』から、男性だけの『崩れる』、若手中心の『水』を経て、一年かけてやっと劇団員の八割くらいの方と共演できた感じで。それこそ今回参加する(小角)まやさんは初めてだし、まだ関わってない先輩もいるから、少しづつ、ね。一年、ニ年経って、やっと少しづつ、劇団の空気に慣れていってる部分がある。

 

カズ そっか。飛鳥の初めては『生きてる風』だったっけ。そこから『崩れる』、『水』、『純愛(純愛、不倫、あるいは単一性の中にあるダイバーシティについて)』『天国への登り方』と立て続けに……。そう考えるともう五作品くらい出てるってこと?

 

飛鳥 そうだね。このニ年間でそういう機会をいただいて。昨年カズが出た『抹消』以外は出てるんじゃないかな? 出来るだけ出るように努めてた部分もあったし。

 

カズ なるほど、なるほど。

 

飛鳥 やっぱり劇団入った時に、最初の一年間は早く成長しなきゃっていう焦りがあったし、広田さんの元で色々勉強したかったこともあったからね。『崩れる』、『水』、『純愛』の時とか公演期間としてはマジで頭おかしいくらい連続だったから。11月→12月→2月って(笑)

 

カズ ハイペースだ!

 

飛鳥 ね。でも最初にかなりハイペースでやれたことはラッキーだったよ。それで馴染めた部分も大きかったし、自分の中で少しずつ実を結んでいく感覚があったんだよね。

 

カズ うんうん。

飛鳥 なんかね、(カズとは)同期とかアマヤドリ劇団員っていうよりは、役者仲間+プライベートでただの友達ぐらいの感覚でいて、最初は。

 

カズ そうそう! そうだったよね。えっ、じゃあ、どうだった? いきなり俺が(劇団)入ってきて? なにも前触れなかったじゃない、相談とか。

 

飛鳥 いや、だから正直言うと最初は結構焦ったよ。やっぱり同い年で同性で、体格も近いしね。世の中の人を三つぐらいに分けたら、多分同じセクションに入るんかなと思ってたから。そういう意味で被るの嫌だな、と思ってた。

 

カズ うんうん(笑)

 

飛鳥 でも、今は役者としての方向性が被るっていうよりも、むしろ、カズの武器を100%出されたときに絶対に勝てないって思わされる怖さがある。そっちの方に脅威を感じるね。なんだか急にもの凄い、場外ホームランみたいなのがバーンって飛んでいくような怖さがあるっていうか。「こいつには絶対勝てない」って思わせる役柄があるというか、そう思わせる役者なんだろうなっていうのは今、改めて同期の劇団員として怖さを感じてる(笑)

 

カズ おお、なんか、ありがとう(笑)

 

飛鳥 逆にそっちはどう思っているの?

 

カズ え! 飛鳥のこと? やあ、だから俺、入るってなった時はちょっと悪いな、みたいなとこあったよ。飛鳥は嫌だろうなって(笑) だけど入ってみて改めて思ったんだよね。飛鳥って、本当にすごい奴だったんだなあ、って。人としても、役者としても、って……。

 

飛鳥 辞めて、そういうの(笑)

 

カズ 飛鳥は俺より全然バランスがいいというか。一緒に「演技のためのジム」に参加してても思うんだよ。なんか、こいつもう慣れてきやがった、みたいな(笑) 広田さんのやり方にもスッと適応して、すぐにそこから先、もっと面白いもの、自分なりの芸術みたいなものを表現する段階に入っているように見えて。それって、ちゃんとベースがないとできないことだと思うんだよね。だから(飛鳥)、超いいなと思ってる。

 

飛鳥 (照)

 

カズ やっぱりいきなり俳優としてさ、バゴーンとニ段階、三段階も上がって成長することはないじゃない? それまでの積み重ねがあってこそいい演技ができると思うんだけど、飛鳥はそういう積み重ねを目に見えて感じるから。日に日にこいつうまくなっていくな、みたいなところがあるから。

 

飛鳥 え、なに、そうやってハードル上げまくってやりづらくさせようという……? 

 

カズ んー、それも少し?(笑)

飛鳥 俺たち、今回、同じ役をやらせてもらうっていう、逃げ場の無い状況に置かれたわけじゃないですか? 元々はただの飲み友みたいなところから始まった二人がさ。

 

カズ そうだね。

 

飛鳥 カズ的にはどう? 今回の意気込みと言いますか、モチベーション的には。

 

カズ モチベーションとしては……。いや、俺さ、昨年『抹消』で久しぶりに舞台に出てね、やる前はもうちょっとできると思ってたんだよ(笑) もうちょっと才能溢れる、器用な奴だと思ってたの、自分のこと。でも、俺はこんなにもできなかったのか~、みたいな。ようやく現実を知った、っていうかさ。俺には何もない、っていうことを強烈に感じたんだよ。だから今回はそのリベンジというかね。昨年とは違うぞ、ってとこを見せていきたいなと。

 

飛鳥 おお。

 

カズ ようやく最近、自分の武器というかね、長所も感じられるようになってきたからさ。それがここでうまく活かせたらいいなって。全体的に、もう全ての点で昨年を遥かに超えたいと思ってる(笑)

 

飛鳥 ちなみに俺と同じ役をやるっていうことについてはどう?

 

カズ そうだな~。割り切って自分の好きにやった方がいいんだろうな、っていうのは思う。俺は上手ぶってやろうとしてもダメだしさ。だから、むしろ有難いんだよ! ダブルキャストじゃない場合って、いつも自分しか敵がいないわけじゃん? 今回はちゃんと、競技じゃないけど、相手チームを意識して出来るっていうのはなかなか無いことだから。しかも、どうせ面白いものを作って来るんだろうな、って思える相手だからね。それをさらに超えたいな、っていう風にね。ポジティブに捉えてる。

 

飛鳥 あー、そうなんだ……。俺はね、やりたくない(笑) 特にカズっていうのはある意味で一番比較されたくない相手かも。だって、場外ホームラン打たれたら勝ち目無いんだもん! 

 

カズ んなこたーない(笑)

 

飛鳥 まあでも、今回三人芝居に出られるっていうのはめちゃくちゃ良かった。一緒にやらせてもらう先輩がもう、ね。ツヨツヨの方々だから(笑)

 

カズ それはもう、ホントに(笑)

 

飛鳥 そういう人たちと共演させてもらえること自体が挑戦的なことではあるんだけどさ。さっきカズにも言ってもらったけど俺もここ最近で、やっと少しづつ自由にお芝居できる感覚を持てるようになってきていて……。だから、今度は公演っていうプレッシャーがかかる場で、かつ先輩方とっていう状況の中で、どこまで自分が積み上げてきたことを形にできるのかっていうのは、もうね、挑戦だなと思ってる。喰らいついていきたいな、って。

 

カズ おお

 

飛鳥 まあ、あのお二方とやれるっていうことに対してはもちろんプレッシャーもあるけどね。だって倉田さん、まやさんなんて、もうずっとアマヤドリの最前線でやってきたような方たちなんだから、正直もう、めちゃめちゃ畏れ多い話なんだけどさ、それでも勝ちに行きたいわけよ(笑) そういうモチベーションで、今、俺はいるから。喰われずにむしろ喰いに行く、ぐらいのテンションで、今、全然いるから。

 

カズ おー! めっちゃモチベーション上がってる!

 

飛鳥 無茶苦茶、上がってる(笑) まぁ、それが今回、うまくハマればいいなって。

飛鳥 今回、被害/加害と言ったことがテーマになるわけだけど……。そのあたりはどう?

 

カズ 何か事件が起きて自分が被害者の立場だとしても、基本的に自分も悪かったと考えてしまうかな。いい子ぶってるわけじゃなくて、自分自身の正当性に自信がないんだと思う。被害者の立場に身を置くためには、相手を加害者側に立たせる構造を作って、事件の要因を突きつけなければいけないと思うんだけど、そういうこと自体が苦手なのかも。なんとか自分にも原因があるってことにして、なあなあにしちゃうかも。

 

飛鳥 ふむふむ。

 

カズ 我こそ正義! というスタンスでいられないんだよね。今までの生き方に自信がないからそう思うのかもしれないけど(笑)

 

飛鳥 相手が完全な加害者で、自分が100%被害者ってするのが苦手っていうのはすごくわかる。

 

カズ 逆に加害者側の立場だったとしても、果たして悪いのは自分だけか? って疑ってしまうかも。

 

飛鳥 それは確かに。

 

カズ 100%でどちらかの立場でいれたら、楽な気もする。自分に言い訳をしなくて済むからね。

 

飛鳥 でもそれって難しくない? いや、カズの話を聞いて思い出したんだけどね……、僕が小学三年生のときに、いじめ、具体的に言えば仲間はずれにあったことがあって。ほんとある日突然、いつも仲良くしてた友達三~四人から仲間はずれにされたんですよ。でも小学三年生だからね。自分ではどうすることもできなかったから勇気を出して母親に相談をして、母は担任の先生に相談をしてくれたんだけど……。担任の先生がその友達に話を聞いてみたら、「だって、飛鳥君いつも僕たちのこと『馬鹿!』とか『あほ!』とか言ってくるんだもん」と泣きながら話したと報告を受けたんだよね。それを聞いた時僕が思ったのは、「いや、でもいじめられたのは僕だから僕が被害者だ!」みたいな気持ちじゃなくて、「俺が悪かったのか、だから俺は仲間はずれにされても仕方が無かったんだな」という気持ちだったんだよね。

 

カズ うんうん。

 

飛鳥 でも同時に、自分を擁護する気持ちも強くてさ……。「あれは俺にとって気を遣わず深い関係性の中で仲良くなりたいという思いからだったのにな。俺は一切馬鹿にしたつもりも否定したつもりもなかったのにな」って。だから僕は、相手を100%加害者として自分を被害者に思えるとしたら、自分の非を認める要素が0か、それ以下でないとできないような気がする。

 

カズ うーん。確かにそうか。

 

飛鳥 でも同時にね、面倒くさい話なんだけど、どこかで「自分は悪くない」と思いたい気持ちがあるのも事実なんだよね。だから結局は、「お互い様だよね」みたいな状況がおそらく心地良いのかな、僕は。

 

カズ ああ、それはすごくわかる。というかさ、自分がもしそういう場にいたとしたら、少しでも早くその場所から離れたくなると思う。

 

飛鳥 そうだね。

 

カズ たとえ多少、自分が加害者としての立場が強くなっちゃうとしても、早く終わるならもうそれでもいいや、みたいな。

 

飛鳥 やっぱりしんどいよね。そういう話し合いとかはね。

 

カズ それを今回演じるんだけどね(笑)

 

飛鳥 しんどい(笑)

 

Q最後に自分の好きなところと嫌いなところを教えてください。

 

飛鳥 自分の好きなところは、なんだろう。ポジティブなところかな。

 

カズ 嫌いなところは?

 

飛鳥 無駄に頑固なところ、とか。カズは?

 

カズ ん~、俺も楽観視するところかな。そして嫌いなところは……ん~。真面目なところ?

 

飛鳥 あー、え、なにいってんの?

 

カズ いや、真面目だから! でも、意外と不真面目! みたいな?

 

飛鳥 んー、はい。現場からは以上でーす!(笑)

アマヤドリ みちくさ公演

『代わりの男のその代わり』

作・演出 広田淳一

2023年9月28日~10月6日@スタジオ空洞

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